実況データを活用するということ②
「選手が突然の失速！ これは低体温症でしょうか」
「海に出た瞬間に選手がつらそうですね。向かい風が急に強まってきてますね」
マラソン競技の中継などで、このような実況をお聞きする機会もあるかと思います。
以前より、気象状況によるパフォーマンスへの影響や実況データの活用方法などを掲載してきましたが、今回はこの気象の観測実況データについての深堀りと活用のポイントをご紹介します。
気象の観測実況データにはどのようなものがあるか
一般によくテレビなどでも見ることができるデータは、気温・気圧・降水量・風向風速・湿度です。
これらのデータ以外にも、多くの機関や民間企業などでさまざまなデータを観測し、さまざまな方法で活用されています。
どうやって入手すればいいのか
これらのデータは、すでに設置されている観測機のデータがインターネット上に無料で公開されているものもあれば、有料で取得できるもの、また自身で観測機器を入手して測るなどさまざまな方法があります。その中の数例を紹介します。
■気象庁ホームページ
気象庁のホームページではアメダス（AMeDAS）と呼ばれる、「地域気象観測システム」のデータが公開されています。
現在、降水量を観測する観測所は全国に約1,300か所（約17km間隔）あります。 このうち、約840か所（約21km間隔）では降水量に加えて、風向・風速、気温、日照時間を観測しているほか、雪の多い地方の約320か所では積雪の深さも観測しています。
観測場所によって観測されているデータの種類が異なるため、注意が必要ですが、知りたい会場周辺や競技の実施ルートの周辺のデータが入手できるのかを確認してみるといいと思います。
■POTEKA NET
POTEKA NETは明星電気株式会社（以下、明星電気）が公開をしている観測情報です。
こちらでは、気象庁HPで閲覧できるアメダスの実況データと明星電気の観測機器（POTEKA）で観測されたデータの一部を現在、無料で見ることができます。場所によっては観測機器がない地域もありますが、POTEKAでは11パターンのさまざまな実況データをリアルタイムに見ることができます。
また、河川水位計の情報や雨雲レーダーなども見ることが可能です。
■WxBeacon2
自分で簡単にその場所の気象状況を観測して活用したいという方には、携帯できる観測機器も増えてきています。
WxBeacon2はアプリ「ウェザーニューズ」の有料会員になり、空の写真を送るウェザーリポートやアプリ内で回答するソラミッションに参加することで獲得するサンクスポイントが累計2000ptとなった方にプレゼントされます。また購入も可能な簡易観測機器です。
WxBeacon2は持ち運びに優れ、気温・気圧・湿度・明るさやUVも観測が可能です。
どのような要素がどのように活用できるのか？
これらの実況データを活かして、試合当日の戦術/戦略を調整していくことは、良い結果につながることが多々あります。
先日、お正月に行われた大学駅伝では、実際に明星電気社の「POTEKA」を使用して各中継所の実況データを観測し、いくつかの出場チームに提供しました。
その中の一つのチームは、往路を終えた時点で次大会のシード権獲得圏内である10位以内には入れておらず、復路での挽回を期していたのですが、復路の天気予報は「弱い向かい風」。最初にペースを上げると後半の失速につながると考えた監督は、選手たちに「序盤はペースを抑えて、後半スパートする」戦略を伝えていました。
しかし、当日に観測機で風のデータを測ったところ、予報よりも風が弱めでほぼ無風の区間もあることがわかりました。我々からその情報をお伝えしたところ、監督は素早く実況データを戦略に反映することを判断し、選手に「風がないから、前半からどんどん攻めて行こう！」と伝えたのです。
すると、チームはどんどん順位を上げ、最後は10位以内でゴールし、次大会の出場権を獲得することができました。
予報データだけを見ていたら、違う展開になっていた可能性もあります。まさに、実況データを活用して、良い結果に結びつけることができたケースでした。
もちろん風だけではなく、雨量や湿度といった様々な要素がスポーツには関係してきます。
事前に予報データを確認して試合のイメージを具体化し、実況データをもとに戦術/戦略を”アジャスト（微調整）”していくことが、より良い結果につながります。
天気は自分たちではコントロールできません。
そして、天気予報も、100%当たるわけではありません。
天気予報をだけでなく実況データもチェックし、活用することで、良い結果を出すための「最高の準備」ができます。
実況データの中には、気象庁アメダスのように、自分たちで情報収集できるものもあります。
たかが気象、されど気象…
天気予報だけでなく、実況データもチェックしてみてくださいね。