熱中症関連

身体冷却①

身体冷却について

  • 内部冷却は深部温の低下に効果的
  • 外部冷却は皮膚温の低下に効果的
  • 気温や湿度が高いときには、上記を組み合わせて行うと効果的

水分補給の次は、身体冷却について紹介していきます。今回は身体冷却の種類について紹介します。

『内部冷却』

身体冷却には外部冷却と内部冷却の2種類があることはすでに述べましたが、内部冷却は、身体の内部からの冷却、つまり冷たい水を飲んだり(冷水摂取)、クラッシュアイス(細かい氷)入りの飲料を飲んだり、アイススラリーという細かい氷の粒子と液体が混ざった飲料を飲むことを指します。このほかメンソール入り飲料を飲むことも内部冷却に挙げられますが、ここでは割愛します。

冷水摂取、クラッシュアイス入り飲料、アイススラリー、どれもいわゆる飲水の形を取りますが、深部温の低下効果はそれぞれで異なり、

アイススラリー > クラッシュアイス入り飲料 > 冷水摂取

の順に高くなります。
これは氷が溶ける際に生じる融解熱と関係していて、アイススラリーを飲んだ時がその融解熱が一番多く発生することと関係しています。つまり、細かい粒子状の氷のまま摂取した方が、より深部温を低下させることにつながるということです。
研究では体重1kgあたり7.5gのアイススラリーを2〜3回に分けて摂取すると、10分目以降に深部温が低下し始め、その低下は摂取後に安静にしている時間が長い方がより低下します(おおよそ30分で0.5〜0.7℃程度深部温が低下する)。

しかし、クラッシュアイス、アイススラリーともに、運動前にこれだけの量を飲むことは大変です。また、たくさんのメンバーがいるチームスポーツや身体の大きい選手で構成されるチーム競技であれば、摂取の負担のみならず、それを準備するチームスタッフの負担まで大きくなります。従って、クラッシュアイスやアイススラリーの摂取は深部温の低下には効果的ですが、その実践となると解決するべきことが多くありそうです。
一方、比較的簡単に作成できる4℃の冷水摂取では深部温の低下効果はほとんど期待できません。

深部温の低下を目的とするのであれば、クラッシュアイスやアイススラリーといった融解熱を用いた内部冷却が効果的です。

『外部冷却』

外部冷却は身体の外から身体を冷却する方法です。スポーツの現場で最も頻繁に行われているアイスパックを用いた冷却や水風呂(冷水浴)、風の利用など身体の外部から冷却を行う方法で、アイスベストも外部冷却に含まれます。
このように、外部冷却は冷却面が皮膚に触れていることから、皮膚温の低下には非常に効果的です。また、

皮膚温は外部冷却を行うと瞬時に低下するので即効性が非常に高いのが特徴

です。
皮膚温が低下すると温熱感覚(暑さ・寒さに対する感覚)も低下しますので、その点では非常に有効な冷却手段と考えられます。
冷たさを感じる感覚器の密度は一般に、前額部で最も高く、次に背中、前腕となっています。氷を額にあてることを好むのは、温度を感じる感覚器が密集していることも関係がありそうです。
その反面、冷水浴など広い範囲を冷却することができれば深部温が低下しますが、狭い範囲の外部冷却では深部温はほとんど変化しません。

『外部冷却の組み合わせと外部・内部冷却の組み合わせ』

上記の2つの方法をいくつかを組み合わせて行なうことで、深部体温や皮膚温の低下を効率的に行うことができます。
特に気温や湿度が高い時には効果的ですので、水分補給と合わせて是非行ってください。

参考文献
平田耕造. 皮膚血流調節の温熱生理学, 繊維製品消費科学, 36(1), 12-17, 1995.

Cabanac, M. The place of the head in the perception of thermal comfort. In; Proceeding of 3rd International Symposium on Clothing Comfort Studies in Mt.Fuji., The Japan Research Association for Textile End-Uses., 1994.

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