熱中症関連

気象条件とスポーツパフォーマンス

  • 気象条件は選手のパフォーマンス発揮や健康に大きく関わる
  • 気象条件の日内変動を理解することが大事
  • 気象条件を活用することでトレーニングの効率化をはかる

季節の移り変わりと気象の活用

運動を行う環境によってパフォーマンス発揮は影響を受けます。例えば気温が高い環境(40℃)では気温の低い環境(20℃)と比較して同一強度での運動継続時間が短くなります。その一方で、気温が極端に低い場合(3℃)でも20℃の場合と比較して上記の運動パフォーマンスが低下します。気温だけでなく湿度もまた、運動パフォーマンスに影響を与えることが研究では明らかになっています。合わせて日射し(輻射熱)や風速もパフォーマンス発揮に影響を与えることがわかっています。従って、屋外環境ではこのような気象条件を考慮に入れてトレーニング計画や試合におけるマネージメントに利用することが、チームまたは選手の競技力向上につながるだけでなく、選手の健康やコンディションを管理する意味においても大切です。

アメリカンフットボールの本場アメリカでは、暑熱順化(暑さになれること)されていない時期に試合期に向けた練習が開始されるため、メディカルスタッフの助言をもとにトレーニング内容を計画することや、順化の効果が得られるまでプロテクターの使用を禁止することなどの対策が推奨されています。

このように、気象条件は選手のパフォーマンス発揮や健康に関わる大きな要因となります。

特に熱中症のリスクが上昇する夏の時期では、気象状況をしっかりとチェックすることが競技力向上のためにも、また不慮の事故を防ぐ上でも大切です。

気象の日内変動

気象の日内変動を理解すると、選手のコンディション管理に役立てることができたり、トレーニングを考案する際の参考になることがあります。日本では朝練習を行っているチームもたくさんあると思います。朝練習自体の是非とは別に、朝と日中、夕方の気象条件にどのような特徴があるか整理しておくことは大事なことです。
例えば朝は、気温が低いため運動が行いやすいイメージがありますが、逆に湿度は日中に比べて高い傾向にあります。必ずしもこういった傾向になるわけではありませんが、発汗による熱放散を考えると、朝はあまり熱放散の効率がよくありません。
一方、日中は太陽の上昇に伴い、気温が上昇することによって湿度が減少します。ですからこの時間帯は、気温の上昇や日射が運動を行う上で問題となります。さらに日本の夏は湿度の影響が加わることから、選手やアスリートの身体的な負担は増大します。夕方になると日射は和らぎますが、日中に地表に蓄えられた熱(輻射熱)の影響で、気温はなかなか下がりません。また、太陽が沈むと湿度が再び上昇します。

このように1日の中でも気象条件の変動する大まかなパターンを知っておくことで、適切なトレーニング負荷を計画する際のヒントとなるはずです。逆に、このような気象条件に関する知識が不足していると、選手やアスリートのコンディションの悪化を早める可能性が、特に夏場においては大きくなりそうです。
従って、このような環境下でトレーニングを効率的に行うためには、気象サイトから情報を小まめに収集することが大事です。是非、気象条件を活用したトレーニングの実践を行ってみてください。

参考文献
Maughan RJ et al,.
Influence of relative humidity on prolonged exercise capacity in a warm environment.
Eur J Appl Physiol. 112(6):2313-2321, 2012.

Otani H et al,.
Effects of solar radiation on endurance exercise capacity in a hot environment.
Eur J Appl Physiol. 116(4):769-779, 2016.

Galloway SD et al,.
Effects of ambient temperature on the capacity to perform prolonged cycle exercise in man. Med Sci Sports Exerc. 29(9):1240-1249, 1997.

American College of Sports Medicine.
American College of Sports Medicine position stand, Exertional heat illness during training and competition. Med Sci Sports Exerc. 39(3):556-572, 2007. Review.

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください