熱中症関連

実践的な暑さ対策について①

〜暑さ対策を行う際に考慮すべき点〜

  • 暑さ対策を行うためには実行可能で、かつ対策の手段と目的を明確にする
  • 運動のそれぞれのタイミングで、同じ冷却方法であってもその効果は異なる
  • 水分補給は事前にしっかりと行い、少なくとも脱水状態で運動を行わない

これまで、暑熱対策の重要性や実際の現場での取り組みなどについて紹介してきました。ここからは、実践的な暑さ対策についてご紹介します。

実践的な暑さ対策は大きく分けて3つです。1つめは身体冷却、2つめは水分補給、3つめは暑熱順化です。
このうち、暑熱順化についてはすでに紹介しましたので、以前のコラムを参考にしていただければと思います。

身体冷却と水分補給、それぞれの暑さ対策をいつ、どのように行うか?という点から考えると、“いつ”に関しては、運動前、運動中、運動間(ハーフタイムや休憩など)、運動後の4つに大きく分けられます。さらに細かくすると、朝起きてから運練習や試合会場に到着するまでの5つに分けることができます。
“どのように”は、どうやって水分補給や身体冷却を選択し、行っていくかということになります。

まず、身体冷却には身体の外から冷却する外部冷却と身体内から冷却する内部冷却の2種類があります。また、これら2つの方法を組み合わせて行うことも可能です。
水分補給も摂取する内容(温度が低い、アイススラリーを飲むなど)によっては身体冷却となり、そしてその場合は内部冷却になります。

さて暑さ対策の実践には、“どうやって行うか?”よりも“何ができるか?”という視点も重要ではないでしょうか?
競技現場では、“誰“が暑さ対策の準備を行うか?という現実的な問題がありますし、効果的な方法でも設備や機械が必要であれば現実的ではないかもしれません。
また、オリンピックなどの世界大会や全国大会では、ロッカールームに入ることのできるパスの数が制限されている可能性も十分に考えられます。
ですから、次に挙げるタイミング別の

暑さ対策に関する情報を自分たちの活動に当てはめ、自分たちに最も適したかつ効果的な暑さ対策を選択

していただければと思います。

暑さ対策を行う上で重要となるタイミング別の留意点を紹介します。

まず身体冷却では、運動前や運動間など、運動を行っていないときには可能であれば深部温の低下を目的とした冷却を選択するのが良いです。
運動前であれば事前の冷却は脱水量を抑えることにもつながります。しかし、深部温はすぐには低下しません。それぞれの方法によって深部温の低下スピードは異なりますが、おおよそ20〜30分程度安静に(冷却に費やせる)時間が必要です。

運動中は深部温の低下を目的とするより、皮膚温の低下に働きかける方法が効果的です。
運動中と運動間で異なる点をポイントとする背景には、身体が熱産生を行っている最中では、同じ冷却手段を用いてもその効果が異なる(運動中に深部温を下げることは難しい)という背景があるからです。
運動後は上昇した体温を素早く低下させることで、循環系の負担を和らげることができます。

一方、運動前や運動中における水分補給の大きな目的は、脱水(体水分が減少すること)を進行させないことや脱水状態で運動を行なわないようにすることが大きなポイントです。
特に運動前は、脱水状態で試合や練習に望まないことを優先します。これを防ぐためには、朝起きた段階から意識することが大事です。
運動中は運動の妨げとならない量を摂取すると同時に、その中身にも注意が必要です。スポーツドリンクを水で薄めて飲む人もいると思いますが、水で薄めると電解質の濃度が下がり、失われた電解質を適切に補給できない可能性があります。
運動間も同様に、その後の運動の妨げになるほどの摂取は基本的には避けるべきです。水分の吸収には個人差がありますが、最初から運動でいつも失われる水分量がわかっていれば、運動前から計画的に摂取できます。
そして運動後はリカバリーとしての水分補給になります。運動後の水分補給は体重の減少分を補うために行いますが、一度に大量に摂取するのは身体の負担が大きい場合がありますので、食事からも水分量を回復させることも念頭におきます。

次回は具体的な“水分補給の方法”についてご紹介します。

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