熱中症関連

暑さ対策の実際②

〜指導者・管理者の役割〜

  • 熱中症の発生リスクは指導者・管理者の意識・知識によって大きく左右される
  • 指導者・管理者はあらゆる情報の取捨選択を適切に行うことが大事

今回は前回の続きと指導者における暑熱対策に関する調査を紹介したいと思います。

前回はトップアスリート達が暑熱対策は必要であると思っているけれども、その実施率、とくに練習時における実施率が少し低い傾向にあるというお話をしました。
ではトップアスリート達は、実際にどのような身体冷却を行っているのでしょうか?

トップアスリートが行っている身体冷却の多くは、アイスパックを用いたアイシングや水かけ、風に当たるなど、日頃、私たちも良く行っている冷却方法です。
実は、この調査が行われた2015年は世界陸上が行われた年でもありました。この大会では、世界のトップアスリートの暑さ対策に関してアンケートが行われ、上記の冷却方法に加え、“アイススラリー”を用いた身体冷却の使用の有無が問われていました。
“アイススラリー”?と思った方もいらっしゃると思いますが、アイススラリーとは細かい氷の粒子と液体が混ざり合った飲料で、通常の冷水より深部体温の低下効果が高いといわれています(アイススラリーに関しては別途ご紹介します)。

同時期に行った我が国のトップアスリートの回答はどうだったでしょうか?
アンケートなので知っていても回答していない可能性も十分に考えられますが、アイススラリーを使用しているという回答は1つもありませんでした。
アイススラリーが良いか悪いかという議論はさておき、問題は、冷却効果の高いこの効果的な方法に関する情報をなぜ世界のアスリートは持っていて、我が国のアスリートは持っていなかったか?ということです。
アイススラリーに関する研究論文は、2010年頃から出ていますので、2015年時点では、“情報”という意味において決して最新というわけではなさそうです。

さて次に、ある屋外競技種目の指導者が持つ“暑さ対策に関する意識”についての報告を紹介します。この調査の実施からは長い時間が経過しているので、この結果を鵜呑みにすることはできないですが、その内容を以下に記します。

この調査では、日本全国の指導者を対象に、競技レベルによって暑さ対策に関する意識に差異があるか調査しています。
調査の結果、暑さ対策に関する情報(この場合は、暑さ対策のガイドブックの有無)に関しては、競技レベルの高いチームの指導者の方がその認知度がより高いという結果でした。
またさらに興味深いことに、年齢の若い指導者の方が夏の練習量を“通常の授業期間より多く取る”という回答も見られました。
これらの結果は、競技現場での暑さ対策に対する取り組みは競技レベルや指導者の年齢によっても変わりそうだという印象を受けます。

今回紹介した調査結果は、選手やアスリートを熱中症から守るという点において大きなヒントを与えてくれているのではないでしょうか。
つまり、

選手やアスリートにおける熱中症の発生リスクは“指導者・管理者”の意識・知識によって大きく左右“される可能性がある

という点です。
指導者・管理者の方はその競技や活動を行う上で必要なあらゆる情報、つまり技術や戦術だけではなく、身体のことや新しい練習方法、コンディショニングに関することなどについても常にアンテナを張り巡らし、その中で取り入れるべき情報と片隅においておく情報の取捨選択を適切に行うことが求められています。
特に熱中症は生命の危険があり、場合によっては監督者の責任が問われます。

そうなってくると「ではどこで情報を?」ということになると思います。
現在、様々な情報が手軽に入手できますが、我々は医科学的な根拠に基づいた “暑さ対策”に関する情報を発信し、みなさんのお役に立ちたいと考えています。

参考文献
中村大輔ほか。日本人トップアスリートにおける暑熱対策に関するアンケート調査.Sports Science in Elite Athletes Support、3、39-51、2018.

安松幹展ほか. サッカー指導者の暑熱対策に関する実態調査.
立教大学研究報告スポーツ・健康科学、19、1-8、2001.

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