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脱水の評価④

起床時の体重を用いた脱水の評価

 前回に引き続き、今回は起床時の体重の変動からみる脱水の評価を紹介します。

基準となる体重測定の重要性

 日々の体重変動を水分補給状態の指標として利用する際は、しっかりと水分補給がされている状態での体重をベースライン(基準値)として設定することが必要です。このベースラインの設定は体水分状態が正常である、またはそのように仮定できる時の体重を利用することが大事です。
 このような状態とするために、研究では実験前日の24時間で3.0Lの水分摂取を行なった際の翌朝起床時の体重を用いたり、同じく前日の24時間で2Lの水分摂取を行ない、さらに実験当日の朝に500MLの水分摂取を行った後の体重を採用したりしています。この時、体重の測定は全裸で行い、排尿は測定前に済ませておきます。
 このようにして得られた、”体水分状態が正常であると考えられる最低3日間の体重の平均値”をベースラインとして、日々の体重変動をモニタリングします。

起床時の変動による評価

 短期間での体重変動を調査すると、おおよそ日々の体重は1%以内の変動で推移するようです。しかし、当然のことながら体重の変動には個人差があり、その変動は1.5%の減少から0.9%の増加の範囲であったことも報告されています。
 1%の体重の低下を脱水レベルの指標として用いることは基本的には合理的であると言えますが、1〜2%までの体重減少の場合には、必ずしも体水分量の正確な変動と一致しない可能性があります。このことから、1〜2%の変動であれば体水分量が正常範囲であると判断するべきであるという見解もあります。一方で、体重の2%以上の減少は非常に高い確率で脱水状態であることが報告されています。
 このような結果から1%以内の体重減少であれば正常範囲の変動と捉え、2%以上の体重減少となった場合には、体水分が不足している状態であると基本的には考えてよいでしょう。しかし、より適切に脱水レベルの評価を行うためには、競技の特性や前日の練習内容、そして体重の変動の個人差を考慮し、それぞれの選手や目的にあった脱水レベルの基準を設定するのがよいでしょう。
 以前は、体重変動の判断基準を「1.5%以上の低下」と紹介しました(水分補給その2)。このように、2%より少し厳しく脱水レベルを管理することももちろん可能です。

 十分な体水分量状態での体重の測定は、脱水レベルの評価にとどまらず、いろいろな面でコンディション管理に役立てることができると思います。是非、一度より正確な状態での体重測定を行ってみてください。

参考文献
Cheuvront S.N., et al. Daily body mass variability and stability in active men undergoing exercise-
heat stress. Int J Sport Nutr Exerc Metab, 14(5), 532-540, 2004.

Cheuvront S.N., et al. Biological variation and diagnostic accuracy of dehydration assessment markers. Am J Clin Nutr, 92(3), 565-573, 2010.

Cheuvront S.N., et al. Physiologic basis for understanding quantitative dehydration assessment. Am J Clin Nutr, 97(3): 455-462, 2013.

Cheuvront S.N. and Kenefick R.W. Dehydration: physiology, assessment, and performance

【イメージ写真】
こちらからお借りしました
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