熱中症関連

身体冷却③

身体冷却について(3)
〜具体的な身体冷却の方法〜

  • 深部温の低下に効果的な内部冷却はアイススラリー摂取
  • 深部温の低下に効果的な外部冷却は全身の冷水浴
  • 冷却方法の実施に際しては必要な準備なども考える

今回はいろいろな身体冷却の方法を紹介します。

『冷水』

冷水(明確な定義はありませんが、おおよそ10℃以下)は誰でもどこでも手軽に行うことができますが、身体冷却としての深部温低下への効果はほとんどないと考えてよいでしょう。

『クラッシュアイス』

クラッシュアイスは細かい氷を混ぜた飲料です。レストランなど、水に入っている細かい氷をイメージするとわかりやすいかもしれません。
氷ごと摂取することによって、氷が溶ける際の融解熱が体内で発生することから、冷水摂取より深部温の低下効果があります。

『アイススラリー』

クラッシュアイスよりさらに細かいスラリー状(液状の氷)のことを指します。
非常に細かい氷の粒子でできていいて、専用の機械で作製するか、機械がなくても市販でも購入できるようになりました。
また、スラリー状に近づけるためにかき氷やブレンダーを使って氷を細かくしたり、スラリーを作成するボトルを購入したりして作成することもできます。ポイントは、なるべく粒子の細かい氷を摂取できるようにすることです。
身体の中に入る前に氷が溶けてしまうと、融解熱の発生が体内では起こりません。同じ量の氷を摂取するのであれば、表面積が大きい方が単位時間あたりの融解熱の発生が大きくなるので、より細かい状態のまま体内に摂取することが深部温の低下には効果的です。

『アイスベスト』

保冷剤を専用のベストに入れて体幹部を冷却します。
専用のベストや保冷剤の準備、持ち運び、1日に複数回行うことが難しい、着ている時の重さが生じる、冬場の保管など欠点がありますが、その使用によって温熱感覚(皮膚温)が和らいだり、心拍数が低下したりしますので、特に運動中に着用するとパフォーマンスへの効果も期待できます。

『前腕冷却』

四肢(上肢・下肢)はその特性上、体幹部と比較して体内の熱を外に逃がしやすい構造になっています。
また、てのひらや足の裏には特殊な血管があって体温調節に重要な役割を果たしていることから、体温が上昇したときに、四肢を冷却することで効率的に深部温を低下させることができます。
下肢の冷却は、設備の問題や準備の問題があり実践することは難しいですが、手掌部を含めた前腕(肘まででもよい)の冷却は、深部温の低下効果が報告されていますので是非試して見てください。
ただ、運動前の冷却(プレクーリング)は深部温の低下にあまり効果がないようです。

『アイスパック』

いわゆるアイシングです。スポーツの現場では、額や首などにあてて利用されていますので、一度は実践した方もいらっしゃると思います。
アイスパックを用いた冷却の最大の魅力は手軽に冷感(皮膚温の低下)が得られることです。
しかし、一度に長い時間当てていられないこと、一度に冷やすことの面積が限られていることなどから、狭い範囲の冷却は深部温の低下にあまり効果がありません。逆に、一度に多くの(広い)部位を冷却することが可能であれば、深部温への効果も期待できます。

『冷水浴』

深部温や皮膚温の低下に最も効果があるのがこの冷水浴です。浸水している部分が大きいほど、冷却効果は大きくなりますが、設備、準備ともに大がかりとなるのが最大の難点です。
冷水の温度は、10℃〜20℃程度までが推奨されていますが、10℃以下となると、刺すような痛みが伴いますので注意が必要です。
冷水浴の方法や効果については多くの研究が行われていますが、おおよそ時間は5分から15分を目安として、一度に入る方法や1分から3分で数回に分けて入る方法もあります。
浸水部位は四肢だけより上半身まで浸かった方が深部温の低下にはより効果的です。

参考文献
Stephens JM, Halson S, Miller J, Slater GJ, Askew CD.
Cold-Water Immersion for Athletic Recovery: One Size Does Not Fit All.
Int J Sports Physiol Perform. 12(1):2-9. 2017

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