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脱水の評価②

体重の変化が意味することとその測定

はじめに

 前回は体水分状態の指標、特に脱水状態を評価する方法の指標について紹介しました。
 今回と次回の2回に分けて、手軽で誰でも簡単に行うことができる体重を使った脱水レベルの評価方法を詳しく紹介します。

体重の変動

 体重は、実際のスポーツ現場において最も手軽でかつ非侵襲的に脱水レベルを把握できる有益な指標の1つです。一般的に体水分量の増減は尿、呼吸、発汗、排泄、嘔吐などによる水分損失と、飲水、食事、細胞のエネルギー代謝によって生じる代謝水によって変化します。体脂肪量や筋肉量は短期間で急激に変化するとは考えにくいので、1日や数日間の体重変動は体水分量の変動であると考えられます。1mlの体水分損失は体重1gの減少と基本的には考えてよいので、体重を測定することで体水分量の変化を捉えることができます。例えば、1kgの体重減少は1Lの水分損失があったと考えます。

 また、体重の概日変動(1日周期)に関する研究では、運動後に適切な水分補給を行い、日々の摂取カロリーを同程度に保った場合の体重の変動は1%以内であることが報告されています。

体重の測定

 体重の測定には体重計が必要です。可能であれば50g精度の体重計を用いると体重の変化をより詳細に把握することができます。体脂肪率が測定できる機能があっても良いと思いますが、脱水レベルを把握するために体重の増減を測定するだけであれば、必ずしも必要ないでしょう。

 測定時の服装はなるべく軽装で行います。また、排尿も済ませてから行います。起床時の体重測定ではそれほど問題になりませんが、夏場の運動後では汗が衣服に吸収され、正確な値が計測できない可能性があります。そこで衣服による影響を極力減らすために軽装または全裸での測定が望ましいです。また靴下は着用せずに測定すること、運動後の測定の際には、しっかりと汗を拭き取ることも大事なポイントです。

 体重計の足場は水平かつ固い場所とし、体重計が沈むことがないようにしましょう。測定を異なる場所で行うことは極力避け、毎日同じ場所で測定することが望ましいでしょう。

参考文献
Cheuvront, S.N. et al. Daily body mass variability and stability in active men undergoing exercise-heat stress. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 14, 532-540, 2004.

Cheuvront, S.N. et al. Hydration Assessment of Athletes. Sports Science Exchange. 18, 1-12, 2005.

Greenleaf, J.E., Problem: thirst, drinking behavior, and involuntary dehydration. Med Sci Sports Exerc, 24, 645-656, 1992.

Shirreffs, S.M. Markers of hydration status. Eur J Clin Nutr. 57, Suppl 2, S6-9, 2003.

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