アドバンス 熱中症関連

脱水の評価①

  • 体重階級制のスポーツでは意図的に脱水を利用することがある
  • 定期的な脱水状態の評価は全てのアスリートにとって有益である
  • 脱水の評価は尿や体重を用いて行われることがスポーツの現場では多い

【はじめに】

 暑熱環境下では、発汗などによる脱水によってパフォーマンス発揮が影響を受けることは良く知られています。また、脱水状態で試合や練習に望むこともパフォーマンス発揮へ悪影響を及ぼすことが指摘されています(実践的な暑さ対策について②実践的な暑さ対策について③、参照)。従って、選手やアスリートの脱水状態を日々評価することは、暑熱環境下でのトレーニングが継続している期間にとどまらず、パフォーマンス発揮の側面からも選手の健康を守る意味においても大事なことです。
 今回から数回に分けて、スポーツ現場における体水分状態の指標、特に脱水状態を評価する方法について、詳しく紹介したいと思います。

【アスリートにおける脱水】

 脱水は、体水分量の不足を意味する言葉として理解されています。脱水と言うと、運動を行った際の発汗量が運動中の水分補給量を上回り、意図せず体重が減少してしまうことをイメージしがちですが、体重階級制のスポーツでは意図的に水分補給を制限して、体重を減少させるための手段として利用します。
 脱水が過度になると体温調節が上手くできなくなることは以前にもお話しましたが、屋外競技だけでなく、体重階級制の選手やアスリートにおいても脱水が関係していると考えられる死亡事故が報告されています。従って、屋外競技、屋内競技の種別を問わず、選手やアスリートの脱水状態を継続してモニタリングすることは非常に大事なことです。

【脱水状態を評価する指標】

 脱水状態を評価する指標には、多くの種類があります。血液を用いた指標(血清・血漿浸透圧、ナトリウム濃度、ヘマトクリットなど)や尿を用いた指標(浸透圧、尿比重、尿の色)、体重や水分摂取量、排便などの排泄行為の回数なども挙げられます。
主観的な評価では皮膚の弾力やのどの渇き、粘膜の渇き具合なども脱水の指標として挙げられていますが、これらの指標は信頼性という意味では先に挙げた指標と比較して客観性が劣ると考えられます。しかし誰でも簡単に行うことができ、かつコストを掛けることなく測定を行うことができます。
 血液を用いた指標は、最も正確に水分補給状態を評価できる方法ですが、技術が必要であったりコストが掛かること、侵襲的であることが特徴として挙げられます。
一方、尿や体重の変動は、誰でも手軽に行うことが可能で、コスト面もあまり問題にならない方法ですので、スポーツの現場では良く利用されています。

参考文献
Cheuvront SN, et al. Dehydration: physiology, assessment, and performance effects.
Compr Physiol. 4(1):257-285, 2014.

Oppliger RA et al. Hydration testing of athletes. Sports Med. 32(15):959-971, 2002.

Shirreffs SM. Markers of hydration status. European Journal of Clinical Nutrition. 57, S6–S9, 2003.

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