アドバンス 熱中症関連

脱水によるパフォーマンス発揮への影響②

持久力への影響

 スポーツ時に脱水状態になると、パフォーマンスが悪くなることはみなさんもなんとなくご存知だと思いますが、実際のところ、脱水が体重の2%を超えると、持久系のパフォーマンス発揮に影響します。
 暑熱環境下での運動時には発汗量が増加するので、体水分量の損失は通常環境下と比較して大きくなります。このことは血漿量の減少と関係していて、運動時における1回拍出量*の低下や心拍数の増加など、血液循環系への負担を増大させる結果を招きます。
 また、全身の血液循環が滞ることで、末梢における活動筋への血液量の供給量不足も起こり、筋肉内におけるエネルギー代謝が影響を受ける可能性も指摘されています。

 研究では、気温35℃、相対湿度40〜50%での環境下において、最大酸素摂取量の60%強度で運動を行なった際の水分補給が、血液循環系に与える影響が検討されています。
 この研究では、運動中に脱水をしないように水分補給を十分に行なう条件と、水分補給を制限した脱水条件の2条件が設定されていますが、脱水条件では脱水しなかった条件と比較して、運動開始60分後における1回拍出量低下と心拍数の増加が認められています。
 このようなことから、持久的な運動を暑熱環境下で行う場合には、水分補給や身体冷却などの暑さ対策を積極的に行い、循環系への影響を軽減することがパフォーマンス発揮の低下に対して有効です。

 しかしその一方で、マラソンのゴールタイムとレース後の脱水率の関係をみると、2時間20分前後でゴールしている選手の脱水率は8%を超えることも報告されています。このことは、トレーニングを積んでいる持久的な選手は、2%という基準は必ずしも当てはまらない可能性を示しているのかもしれません。
 一方、脱水レベルが2%以内で、気温が20〜21℃の範囲で行われる90分以内の運動であれば、基本的には持久力は影響を受けないと考えられています。

*1回拍出量・・・ 心臓が1回の拍動で全身に送り出す血液量

参考文献
American College of Sports. American College of Sports Medicine position stand. Exercise and fluid replacement. Med Sci Sports Exerc 39, 377-390, 2007.

Cheuvront, SN., et al. Fluid balance and endurance exercise performance. Curr Sports Med Rep, 2(4): 202-208, 2003.

Cheuvront, SN., et al. Fluid replacement and performance during the marathon. Sports Med, 37(4-5): 353-357, 2007.

Febbraio MA. Does muscle function and metabolism affect exercise performance in the heat? Exerc Sport Sci Rev, 28(4): 171-176, 2000.

Gonzalez-Alonso J., et al. Muscle blood flow is reduced with dehydration during prolonged exercise in humans. J Physiol, 513 ( Pt 3): 895-905, 1998.

Shirreffs SM, and Sawka MN. Fluid and electrolyte needs for training, competition, and recovery. J Sports Sci, 29 Suppl 1: S39-46, 2011.

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