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脱水の評価③

体重測定のタイミングと運動前後での脱水の評価

体重測定のタイミング

 体重を測定するタイミングは大きく分けて2つあり、1つは運動前後における測定、もう一つは起床時のタイミングでの測定です。
 1つ目の運動前後における体重測定は、練習や試合前後で行う測定のことで、練習や試合を行った際の脱水量の判断に利用します。この測定で、練習や試合中の発汗量に対する水分摂取量の過不足を知ることができます。
 2つ目の起床時における体重測定は、体水分量の変化を1日単位の視点で評価する指標として利用します。起床時での測定は、食事の影響を受けないことや睡眠により安静が保たれた後の測定ですので、体重の変動に影響を与える要因が1日の中で最も少なくなるタイミングでの測定と言えます。

運動前後での脱水の評価

 運動前後の脱水レベルの評価は、体重の減少量によって把握できます。実際のスポーツの現場では、運動前の体重からの脱水率(%)が良く利用されています(下記参照)。
この脱水率が2%を超えるとパフォーマンス発揮に影響を及ぼすと考えられているので、この値を超えて体重が減少していないか否かで、その日の運動中の水分摂取量が適量であったかの判断材料になります。
 水分摂取量が発汗による体重減少より多い場合は、脱水率はマイナスとなります。仮に運動中の飲水を制限した場合、つまり“飲水なし”の場合は、この体重減少分が総発汗量となります。
運動中の水分摂取量を調べることができると、総発汗量に対する水分補給の達成率(水分補給率)が算出できます。水分補給率が100%であれば、発汗量と水分補給量が等しくなり、体重減少、つまり脱水率がゼロとなります。
 ある調査によると、陸上競技の長距離種目などではこの水分補給率が非常に低くなっていたことが報告されていますが、競技特性や休憩時間の設定などによってこの値は影響を受けると考えられます。

以下にそれぞれの算出式を記載します。

 脱水率(%)  :(運動前の体重-運動後の体重)÷ 運動前の体重 × 100
 飲水量     :運動中に摂取した水分の量
 総発汗量    :(運動前の体重 – 運動後の体重 + 飲水量)
 水分補給率(%):(水分補給量 ÷ 総発汗量)× 100

 より良い水分補給を行うために、一度練習中の飲水量を量ってみることをお勧めします。

 次回は、起床時の体重変動から考える脱水の評価について紹介します。

参考文献
Cheuvront, S.N. et al. Daily body mass variability and stability in active men undergoing exercise-heat stress. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 14, 532-540, 2004.

Greenleaf, J.E., Problem: thirst, drinking behavior, and involuntary dehydration. Med Sci Sports Exerc, 24, 645-656, 1992.

Cheuvront, S.N. et al. Hydration Assessment of Athletes. Sports Science Exchange. 18, 1-12, 2005.

Shirreffs, S.M. Markers of hydration status. Eur J Clin Nutr. 57, Suppl 2, S6-9, 2003.

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