熱中症関連

身体冷却②

身体冷却について(2)
〜そのタイミングと効果について〜

  • 運動前は深部温を低下させる
  • 運動中の主役は外部冷却
  • 運動後にも身体冷却(リカバリー)
  • 水分補給と組み合わせて暑さ対策を行う

今回は、運動時におけるタイミング別の着目点について紹介します。

身体冷却には外部冷却と内部冷却の2種類があり、目的とする効果(深部温の低下と皮膚温の低下)によって使い分けることが効果的です。
従って、運動時のそれぞれのタイミングで、どの冷却方法を用いると深部温や皮膚温に対してどのような影響がでるか知っておくことは、暑さ対策を行う上で非常に重要です。

熱中症の発生リスクを低下させるためには、身体冷却と水分補給を組み合わせて対策を行うと効果的が高まります。
暑さが厳しい時には必ず双方の暑さ対策を実践してください。

『運動前』

まず運動前は時間的な余裕があれば、深部温を低下させることができれば暑さの中で運動を行うためには有効です。
運動前に深部温を下げておくことは、身体に蓄えることのできる熱の量を増加させることができますし、汗のかき始めまでの時間を稼ぐことができるので、結果として発汗量を減らすことにもつながります。

その一方、前回のコラムでも紹介したように、深部温の低下はすぐにはおこりません。冷水浴のような外部冷却であれ、アイススラリーを用いた内部冷却であれ、深部温が低下するためには安静にすることのできる時間(30分前後)が必要です。
深部温は外部冷却でも内部冷却でも多くの冷却面積や多くの摂取量、そして長い時間安静を保った方がより低下量が大きくなります。
外部冷却を用いる場合は、冷却後にウォーミングアップを行って、筋温を上昇させることで、筋力発揮への影響は軽減できます。

『運動中』

運動中は運動による熱産生(筋肉が運動により熱を作り出すこと)が大きいことから、いかなる冷却を行ったとしても、深部温を下げることは難しいと考えておいて良いでしょう。
海峡を横断するスイマーが泳いでいても深部温が低下するデータをみたことがありますが、少なくとも一般的な状況ではありません。ですから、運動中は皮膚温を低下させることを目的として、温熱感覚を低下させ、少しでも心地よく運動を行うことを基本的には考えます。
従って、このタイミングでは外部冷却が主役となります。水分補給と合わせて積極的に行いましょう。

『運動間』

ハーフタイムやウォーターブレイクなどの運動間では運動中と比べて、冷却を行える手段も時間も増加しますので、状況によっては皮膚温のみならず深部温の低下を目的としてよいでしょう。
ただ、次に運動を行う状況ですので、過度に筋温を低下させる冷水浴を用いた場合には、運動前同様、再度ウォーミングアップを行うと良いです。
深部温の低下は短時間で起こらないので、皮膚温の低下も目的とした冷却が主になりますが、方法によっては比較的短時間で深部温の低下が期待できます。運動間でも水分補給と合わせて行ってください。

『運動後』

運動後は、深部温や皮膚温の上昇を素早く安静状態に戻してあげることによって、循環系の負担を軽減することができます。
運動中は運動による心拍数の増加に加え、暑さを身体の外に逃がすために皮膚の表面に血液を送りますので、その分心拍数が増えます。運動が終わっても、深部温はすぐには低下しないので、循環系の負担は継続します。
従って、身体冷却を行うことによって、素早く循環系の負担を軽減することはとても大事です。

またこれによって無駄な発汗を抑えることもできます。外部冷却・内部冷却のどちらを用いても構いませんが、内部冷却のみの場合は、皮膚温の低下は期待できませんので、こちらも組み合わせて行うと良いとでしょう。

参考文献
Tyler CJ, Sunderland C.
Neck cooling and running performance in the heat: single versus repeated application.
Med Sci Sports Exerc. 43(12), 2388-2395, 2011.

Kenny GP, McGinn R.
Restoration of thermoregulation after exercise.
J Appl Physiol (1985). 122(4), 933-944, 2017.

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