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熱中症関連

子供の暑さ対策①

“暑さに“対する大人と子供の違い

  • 子供は大人と比べて体重あたりの表面積が広い
  • 子供は大人と比べて汗をかける能力が低い
  • 子供は大人と比べて水分補給に関する意識が低い
  • 子供は大人と比べて暑熱順化の獲得に時間がかかる

注)
各年代の年齢の目安
小児期・・・思春期より前
思春期・・・12才から15才頃
若年成人・・15才以降(思春期後)

【はじめに】

子供は大人と違って暑さに弱い、ということを理解している方も多いと思います。しかし、そのような情報を暑さ対策の実践に役立てている方は少ないのではないでしょうか?
今回は、小児期注)から若年成人注)までを対象とした医科学的な知見をもとに子供の暑さ対策について考えてみたいと思います。また、本文での“子供”という表記は、思春期まで(〜15歳頃)の年齢を指していますが、成長速度には個人差があることを念頭において読んで頂ければと思います。

【体温調節に関連する子供の身体的特徴】

大人と比べて子供は体重あたりの表面積が広い傾向にあります。これは、熱を身体の外に逃がしやすい構造となっている反面、外気温の高い夏などは、身体の外から暑さが体内に入ってくることにもなります。
また、汗をかくことのできる能力も大人のそれと比較して低いこともわかっています。このため、気温が高く、大人でも汗をたくさんかくような日に運動をすることは体温が過度に上昇してしまう、いわゆる高体温のリスクが高まります。
これに加えて、大人と比べて歩行時やランニング時の熱産生が大きいことも指摘されています。発汗が運動時の熱放散の手段として非常に大きな役割を果たしていることを考えると、発汗機能が未発達な子供が暑さの中で長時間運動を行うことは、いかに高体温のリスクを高めるかということが理解できるのではないでしょうか。

発汗できる量は思春期以降に増加することが指摘されていますが、思春期以降にすぐさま大人と同様となると考えるのは危険です。それでは汗をたくさんかくことのできない子供達はどのように熱を身体の外に逃がしているのでしょうか?その答えは、子供達が真っ赤な顔をして運動している姿にみることができます。
つまり、子供達は皮膚表面を流れる血液を多くして身体の外に熱を逃がしています。汗をたくさんかくことのできない子供達が真っ赤な顔をして運動をしているときには体温が高くなっていると理解しておくことが大事です。

【暑さに対策に関連する子供の特徴】

具体的な暑さ対策に関連する思春期までの子供達には、どのような傾向があるのでしょうか?
実践的な暑さ対策として、暑熱順化、身体冷却、水分補給などが挙げられますが、暑熱順化に関しては、大人と比較して順化の獲得までに時間が掛かることが報告されています。
このことは、熱中症が多発する時期の運動の実施について、大人より更に注意深く運動計画を立てる必要性を意味します。また水分補給に関しては、子供は運動中に水分補給の必要性をあまり感じないことから、同じ運動を行った際の脱水量が計画的な水分補給を行った場合と比較して多くなることが報告されています。
このような点を改善するために、多くの休憩時間を設け水分補給を行う時間をしっかりと確保することやスポーツドリンクなど味のついた飲みものを用意したりすることで、水分補給がしっかりと行うことができる環境を整えることが重要です。

【アメリカにおける暑熱環境下での運動制限】

日本ではWBGTが暑熱環境下における運動可否の目安として用いられています。具体的にはWBGTが28℃以上で“厳重警戒”、31 ℃以上で“運動は原則中止”となっています(2019年8月時点)。
一方アメリカでは、American Academy of Pediatrics(アメリカ小児学学会と訳す?)によってWBGTが29℃以上を記録すると“すべての運動が中止”という指針が発表されています。また、アメリカンフットボールの選手の熱中症予防に関して、広大なアメリカ大陸における気候を考慮した、地域毎のガイドラインを作成するべきだという主旨の論文も発表されています。

【その他】

その他の特徴として、大人と比較すると自己主張が上手にできないことも考えられます。
中学校1年生や高校1年生が熱中症の発生件数が高い傾向にあることも、もしかしたらこのようなことが関係しているのかもしれません。

参考文献
AMERICAN ACADEMY OF PEDIATRICS, Committee on Sports Medicine and Fitness
Climatic Heat Stress and the Exercising Child and Adolescent. Pediatrics;106;158, 2000.

Bar-Or O et al. Voluntary hypohydration in 10- to 12-year-old boys. J Appl Physiol Respir Environ Exerc Physiol. Jan;48(1):104-108, 1980.

Arnaoutis G et al. Ad libitum fluid intake does not prevent dehydration in sub optimally hydrated young soccer players during a training session of a summer camp.
Int J Sport Nutr Exerc Metab. 23(3):245-251, 2013.

日本スポーツ協会,スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック.2019.

Grundstein AJ et al. Fatal Exertional Heat Stroke and American Football Players: The Need for Regional Heat-Safety Guidelines. J Athl Train. 53(1):43-50, 2018.

井上芳光.体温調節システムと適応的変化.体温Ⅱ.ナップ,pp220-237,2011.

【イメージ写真】
こちらからお借りしました
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