実践的な暑さ対策について③
水分補給について（２）
- 基本的な水分補給目安量は体重の2％
- 自由な水分補給ではなく、予め決められた量を飲む計画的な水分補給を行う
- 運動前は脱水状態で運動に臨まない
- 運動中は運動前と合わせて目安となる量を摂取する
- 運動後は体重減少分を素早く回復させる
今回は運動前・運動中（運動間）・運動後における水分補給のポイントを紹介します。
基本的な水分補給の考え方は、運動による体重減少をいかに少なくするかということです。
水分補給の方法は大きく二つあり、一つは好きな時飲みたい時に飲む自由な水分補給、もう一つは予め決められた量を飲む計画的な水分補給です。
自由飲水では脱水量が増えてしまうことが指摘されていますので、ここでは計画的な水分補給の方法を基に、それぞれの運動のタイミング別のポイントを紹介します。
『運動前』
運動前の水分補給で最も重要なことは、”脱水状態で運動に臨まない”ということです。
そのためには、朝に体重を計測したり、尿の色をチェックしたりすることから始めます。体重の減少が前日と比較して1.5％を超えていたり、尿の色が濃かったりする場合は水分補給を意識して行う必要があります。朝の時点での水分補給は体重1kgあたり5〜7mlの水分量が目安です。
運動を行う会場に着くまでに、その日の目安となる水分補給量を計算しておきます。運動前後の体重減少量（脱水量）がわかっている場合は、その量が補給量の目安になります。わからない時は体重の2％を目安とします。
通常計画的な水分補給は、運動が始まってから目安となる量を複数回に分けて摂取する方法が一般的ですが、運動中は様々な理由で十分に水分補給ができない可能性や、会場までの移動でも水分が失われるので、ここでは会場についた時点から計画的な水分補給を行ことを勧めます。具体的には体重の2％分の水分量を、運動前と運動中（運動間がある場合はそこも含めて）で複数回に分けて飲むことになります。
各タイミングにおける具体的な水分補給の割合は、個人特性や運動形態、運動中に尿意がでないかなど、様々な点を加味して、個人にあった分量比を探す必要があります。
運動前にあまり水分を多く取り過ぎると、運動中に尿意が出る可能性がありますので注意が必要ですが、ウォーミングアップが終了する頃には目安となる量の半分程度を摂取することからはじめてみてください。
運動前やウォーミングアップ中は比較的水分補給が行いやすいですが、練習が進んだり試合となると水分補給を行うことが難しくなることがあるのが現状だと思います。
『運動中』
運動中は、運動前に引き続き”目安となる量を摂取すること”を心がけます。
計画的な水分補給の研究でも脱水量がゼロになることはありませんので、足りなければ水分補給を追加して行ってください。
量を飲むことに慣れていないけど脱水が気になる方や水分補給によっておなかが痛くなる心配をしている方もいらっしゃると思いますが、腸もトレーニングによって適応することが指摘されていますので、これらの懸念も改善できるかもしれません。
運動中の飲料の内容や温度に関しては、前回お知らせした内容を参考にしてください。
『運動後』
運動後は、”体重減少分を素早く回復させること”が重要なポイントになります。従って、運動前後で体重を計測することはとても重要です。
脱水量がわかれば、その日の水分補給量が適切だったか否かもわかりますし（2％以内であれば問題なし）、運動後にどれほど水分補給を行うかの目安もわかります。
運動後では体重減少1kgにつき、1Lを補給します。脱水量が多い場合は一度に飲むことが大変になるので、複数回に分けて補給しても構いません。
また、食事でも体水分は回復しますので、しっかりと食事を摂ることも大事なことです。その際に、スープや汁物があれば一緒に塩分も補給できますし、可能であればタンパク質の摂取も行いましょう（暑熱順化参照）。
また運動後には、素早く体温を下げることで余分な発汗を防ぐことができます。冷水浴やシャワー、糖質補給の側面も合わせて考えるとアイスクリームなども効果的です。
参考文献
Murray R.
Training the gut for competition. Curr Sports Med Rep. 5(3), 161-164, 2006. Review.
American College of Sports Medicine, Sawka et al.
American College of Sports Medicine position stand. Exercise and fluid replacement.
Med Sci Sports Exerc. 39(2), 377-390, 2007. Review.