熱中症関連

暑さ対策の実際①

~暑さ対策への意識~

  • スポーツや学校などの現場で熱中症の発生がなくなる可能性はほとんどない
  • 暑さ対策の実践が運動時における熱中症の発生リスクを軽減する

前回は、なぜ暑さ対策が必要か?という問に対して、体温のデータから話をしました。暑さ対策の大切さについては少しずつ理解していただければと思いますが、スポーツや学校などの現場では、熱中症の発生が後を絶ちません。
もちろん、熱中症の発生をなくすこと自体は大変難しいことです。しかし、その発生要因と対策に関する情報があれば、熱中症の発生リスクを減らすことはできるはずです。特に対策に関しては、科学的な知見に基づいた情報を基に、自分にあった“暑さ対策”を講じることができるようになることが大事です。

さて、暑い中でも運動をしなければ行けない日本のトップアスリートたちは、どのように暑さ対策を行っているのでしょう?暑さの中でもパフォーマンス発揮を行わなければいけない彼らは、通常とは異なる何か特別な意識や取り組みを持っているのかもしれませんし、またその逆で暑さそのものを全く問題にしていないのかもしれません。

126名、7競技団体の我が国のトップアスリートを対象として、試合中およびトレーニング中に行っている暑さ対策についてのアンケート調査を行った結果を紹介します。

まず、「試合中に暑熱環境(暑い環境)の影響を受けてパフォーマンスが低下すると感じたことはありますか?」 という質問に対する回答では、126名中112名(89%)のアスリートが“はい”と回答しています。トレーニング中も同様に、104名のアスリートが“はい”と回答しています。
トップアスリートたちも暑さによってパフォーマンス発揮が影響を受ける、という意識を持っていることがわかります。

それでは彼らの“暑さ対策”の実践に関してはどうでしょうか?

「試合中の暑熱対策(暑さ対策)は必要だと思いますか?」という質問に対する回答ではなんと、126名中126名(100%)のアスリートが“はい”と回答しています。トレーニング中も同様に、95%のアスリートが“はい”と回答しています。

しかし、そのような意識であるにも関わらず、「暑熱環境下での試合中またはトレーニングに身体冷却を行いますか?」という回答については、試合中で86%、トレーニング中では64%と約3割のアスリートが身体冷却を行っておらず、しかもその実践は試合中より低い結果となりました。
当然のことながら、様々な理由で行えないこともあると思います。しかし、必要だと感じている暑さ対策ですが、その実践となるといつも同じようにすることは、彼らでさえ難しいのかもしれません。

さて、みなさんはいかがでしょう?暑さ対策は必要だと思っているけど、実際はやったりやらなかったりだな~と思った方も多いのではないでしょうか。
でも、すでにみなさんは、熱中症の恐怖や暑さ対策の重要性についての情報をお持ちです。競技スポーツに携わる人、部活動を行っている人、スポーツ愛好家の人、いかなる人も暑さの中で運動を行う場合には、熱中症を発症してしまうリスクがあります。
しかしそのような中でも暑さ対策をしっかりと行うことが、熱中症がおこるリスクを減らすことのできる唯一の手段です。

準備や対策にやり過ぎはないと思います。

引き続き、多くの科学的な知見に基づいた有益な情報提供を行っていきます。

参考文献
中村大輔ほか.日本人トップアスリートにおける暑熱対策に関するアンケート調査.
Sports Science in Elite Athletes Support, 3,39-51, 2018.

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