熱中症関連

熱中症発生リスク軽減を目的としたコンディショニング

【はじめに】

 熱中症の対策もトレーニング計画と同様に、目的とする活動(ここでは夏季の大会や活動とする)に向け、トレーニングを期間毎に区切る“ピリオダイゼーション“モデルに基づいて進めることが重要です。
 一般的には数ヶ月から数週間のサイクル毎にトレーニング計画を基本的に考え、それにもとづき週間のトレーニング計画を実践することが大事です。

【5〜6月の取り組み】

 暑さに強い身体をつくるコンディショニングだけを考えるとすると、5〜6月の気温が少しづつ高くなり始める時期に、体力面をしっかりと強化する必要があります。それは、体力(持久力)を高めておくことが、血液量の増加など、暑さに強い身体をつくる手助けになるからです。また、暑熱順化の獲得は、持久力の強さが関係しているという報告があるからです。

【6〜7月の取り組み】

 一方、6月〜7月初旬は、梅雨による影響で、仮にこれまで暑熱順化が獲得できていたとしても、順化を維持するために必要なレベルまで運動中の体温が上昇しない可能性があります。また、上昇したとしても数日間継続することが難しくなること、そして順化自体がまだ獲得できていない可能性も考えられるため、受動的な暑熱順化を行うことが具体的な方策になります。
 受動的な暑熱順化に関しては、“受動的な暑熱順化”や“暑熱順化の獲得と消失”を参考にしていただければと思います。

 6月でも気温が上昇する日がありますので、このような日の運動は順化を少しずつ進めてくれる可能性があります。しかし、梅雨前の時期と比較して、高温・多湿・強い日射の3条件が揃いやすくなることや、それまでの気象条件(梅雨の長雨など)により活動が制限されていた状態からの急激な運動強度の増加は、かえって熱中症の発生リスクを高める可能性もあります。
 また来るべき夏に向けて、運動中の水分補給の仕方や身体冷却の方法、脱水の評価方法、リカバリー方法など、暑さが本格化した際に行う実践的な暑さ対策への理解と準備を進めることも効果的です。

【梅雨明け以降の取り組み】

 梅雨が明け、夏本番を迎えた際にも、急激に運動強度をあげないことが大事です。最低1週間は強度の高い練習を1時間以上は行わないこと、そしてその1週間が経過した後も、更にその後の数日間は、これまでの1週間の急激な熱負荷増加による負担のリカバリーを考え、除々にアクセルを上げていきます。暑熱環境であっても、そうでなくても、疲労が軽減しフィットネスレベルが向上するためには、少し時間が掛かるからです。
 これらの期間が経過し、コンディションが整えば、実践的な暑さ対策が更に効果的なものとなり、熱中症のリスクを軽減することにつながります。

参考文献
Casadio, JR, et al. From Lab to Real World: Heat Acclimation Considerations for Elite Athletes. Sports Med, 47, 1467-1476, 2017. 
Heathcote, SL. et al. Passive Heating: Reviewing Practical Heat Acclimation Strategies for Endurance Athletes. Front Physiol, 9, 1851, 2018. 
Loren, ZFC, et al. The Fitness-Fatigue Model Revisited: Implications for Planning Short- and Long-Term Training. Strength and Conditioning Journal. 25, 42-51, 2003.
Pandolf, KB, et al. Role of physical fitness in heat acclimatization, decay and reinduction. Ergonomics, 20, 399-408, 1977.

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください